AIに絵を描かせ、その絵だけを次のAIに見せて描き写させた。伝言ゲームの絵版だ。これを3つのお題で、100回ずつくり返した。
100回目の絵を、何も知らない別のAIに見せた。3つとも、最初のお題を正しく言い当てた。
ただ、絵の中身は同じではなかった。猫のしっぽは腕になり、ベーコンは赤い線になり、窓の外の丘は緑の円になっていた。
やり方
最初のAIに、お題を言葉で渡して絵を描かせる。その絵を画像にして、次のAIに見せる。頼むのは「同じ絵を描き写して」だけ。お題も、これが伝言ゲームであることも伝えない。
描かれた絵をまた画像にして、その次のAIに見せる。これを100回目まで続ける。
- 1回ごとに新しい会話で描かせる。見せるのは直前の1枚だけで、それより前の絵は見せない
- 依頼文は毎回同じ
- AIは、描いた絵を自分で画像にして確かめない
- 絵の出来を理由にした描き直しや手直しはしない
- お題はごく一般的な言葉だけ。既存のキャラクターや作品は使わない
お題は「自転車に乗る猫」「灯台のある海辺」「朝ごはんの食卓」の3つ。生き物と道具の組み合わせ、風景、小さな物がたくさんある場面、という違いをつけた。
絵はSVGという、図形を並べて描く形式で描かせている。写真のようにぼやけていく劣化は起きない。変わるとすれば、AIが前の絵をどう読み取ったか、によってだ。
自転車に乗る猫
最初の3回で、絵は大きく簡略化された。顔の模様、車輪の細い線、チェーンが消えた。図形の数は1回目の94個から、2回目で61個になっている。
そのあとは、ゆっくり変わった。
いちばん分かりやすいのはしっぽだ。1回目は、丸めて立てたしっぽだった。それが少しずつ形を変え、14回目あたりから「上げた腕」に見えるようになった。17回目を描いたAIは、自分の報告に「手を振る猫」と書いている。1回目を描いたAIは「両手でハンドルを握り」と書いていた。
一度腕になったしっぽは、しっぽに戻らなかった。次のAIにとっては、それが最初から腕だったからだ。100回目の猫は、片腕を横にまっすぐ伸ばしている。
ほかにも、青いマフラーは胸を横切る帯になり、ペダルは赤い箱を経て蛍光ピンクの四角になった。空は水色から濃い青紫へ、太陽は黄色からオレンジへ変わった。
灯台のある海辺
1回目は、落ち着いた色の夕暮れだった。10回目までに、空はピンクと紫に、海はエメラルド色になった。色はその後も、回を重ねるごとに濃くなっていった。
飛んでいた鳥は、波線や弧のような記号になった。雲の一つは、濃い紫の楕円になった。灯台の横の小屋は、ピンクの壁のような形になった。
岩には、光の当たる面を表す明るい三角形があった。それが70回目から80回目にかけて青くなった。光の当たり方を表していた形が、いつのまにか「青い三角形という物」として描かれるようになった。
朝ごはんの食卓
小さな物が多いこのお題では、一つひとつが別の形になっていった。
波打っていたベーコンは、赤い線2本になった。オレンジジュースのグラスは、縦じまの筒を経て、細い棒の束のような形になった。トーストは黄色いひし形に、木目のテーブルは無地になった。コーヒーから立っていた湯気は、30回目までに消えた。
いちばん大きく変わったのは、窓の外だ。最初は窓の中におさまっていた丘が、回を重ねるごとに大きくなった。60回目から70回目のあいだに窓枠からはみ出し、100回目では、窓に重なる大きな緑の円2つになっている。
別のAIに見せて、何の絵か聞いた
1回目と10回ごとの絵を、1枚ずつ、何も知らない別のAIに見せた。尋ねたのは「何の絵か、一文で」だけだ。
100回目でお題が伝わった3 / 3
100回目の絵への答えは、こうだった。
- 晴れた青空の下、オレンジ色の猫が赤い自転車に乗って道を走っている絵です。
- 夕日が沈む海辺に、光を放つピンクと白の縞模様の灯台と小舟、砂浜のヒトデが描かれたフラットなイラストです。
- 窓の外に太陽と緑の木々が見える食卓に、目玉焼きの皿やトースト、フォーク、ナイフ、青いマグカップ、ジャムの瓶が並んだ朝食の風景を描いたイラストです。
お題そのものは3つとも残っている。一方で、答えを回の順に並べると、途中で消えたものや変わったものがある。
| お題 | 答えから消えた・変わったもの |
|---|---|
| 自転車に乗る猫 | 「青いスカーフ」は20回目までの答えにあり、30回目以降の答えにはない |
| 灯台のある海辺 | 「赤と白の縞」が、90回目から「ピンクと白の縞」になった |
| 朝ごはんの食卓 | 「湯気」は10回目まで、「ベーコン」は50回目まで。窓の外は80回目から「緑の丘」ではなく「緑の木」と答えられた |
3つに共通していたこと
- 最初の10回ほどで大きく簡略化され、そのあとはゆっくり変わった
- 色が、回を重ねるごとに濃く鮮やかになった
- 一度起きた読み違いは元に戻らず、次の回からはそれが元の絵として引き継がれた
「100回もくり返せば、絵は崩れて別物になるだろう」と考えて、描き写すものがなくなったら止める、という条件も決めていた。その条件は一度も使わなかった。3つとも100回目まで、絵として成り立ったまま進んだ。
WHAT REMAINED
骨組みは残り、細部が入れ替わった
Claude Code(Claude Opus 5.5)に、3つのお題をそれぞれ100回描き写させた。何の絵かは、100回目でも別のAIに伝わった。
変わったのは細部だった。しかも、ぼやけて消えたのではない。しっぽは腕に、丘は緑の円に、岩の明るい面は青い三角形に。別の、はっきりした何かに置き換わっていった。
お題は3つで、それぞれ1回ずつしか走らせていない。同じお題でもう一度やれば、違う変わり方をするはずだ。描いたAIも、絵を見て答えたAIも、同じ種類のAIだ。
この記事にある絵の変化の説明は、AIが10回ごとの絵を並べて見てまとめたものだ。あいだの回を1枚ずつ確かめてはいない。絵そのものは上に載せてあるので、見比べてほしい。
何の絵かは、100回目でも伝わった。ただ、猫のしっぽは最後まで腕のままだった。
EXPERIMENT DATA
実験データ
- 実験日
- 2026年10月9日(予行と本番)
- 実行環境
- Claude Code(デスクトップアプリ)
- 絵を描いたモデル
- Claude Opus 5.5
claude-opus-5-5 - 回数
- 3つのお題 × 100回 = 300回。猫の1〜20回目は予行の結果で、21回目から本番として続けた
- 描かせ方
- 1回ごとに新しい会話(サブエージェント)を立て、直前の1枚の画像と同じ依頼文を渡した
- 画像への変換
- 毎回同じ方法で、絵の縦横比のまま長い辺を512ピクセルにした。全300枚が512×384
- 図形の数(1→50→100回目)
- 猫 94→59→39 / 灯台 65→53→52 / 朝ごはん 66→58→45
- 途中で止まったお題
- なし。安全でない内容を含む絵は0件
- 描き直した回
- 2回。予行の2回目(画像への変換の不備で、絵の上下に白い帯が付いたため)と、朝ごはんの73回目(描いている途中で会話が切れたため)。絵の出来を理由にした描き直しはなし
- 裏方の作業
- 絵を画像に変換して次の回へ渡す作業は、決まった命令を実行するだけの別のAI(小型のモデル)に行わせた。猫の80回目だけ、同じ命令を手動で実行した
- 節目の確認
- 1回目と10回ごとの計33枚を、1枚ずつ別の新しい会話のAIに見せて答えさせた
- 役割
- 企画案・条件の下書き・実行・記録・この記事の下書きはClaude Code。企画の選択、条件の承認、公開の承認は人
- 追加費用
- 0円 / 今回のための新規契約・購入なし
実際に渡した依頼文
1回目:「{お題}」の絵をSVGで描いてください。外部の素材は使わず、SVGファイル1つで完結させてください。描いたSVGを画像に変換して確かめたりせず、書き上げたものをそのまま {保存先} に保存してください。ほかのファイルやフォルダは見ないでください。質問はせず、この1回の依頼で完成させてください。
2回目以降:{画像の場所} にある画像を見て、同じ絵をSVGで描き写してください。外部の素材は使わず、SVGファイル1つで完結させてください。描いたSVGを画像に変換して確かめたりせず、書き上げたものをそのまま {保存先} に保存してください。ほかのファイルやフォルダは見ないでください。質問はせず、この1回の依頼で完成させてください。