題材を一言だけ伝えて、AIに15個のゲームやアプリを作らせた。作り直しも手直しもなし。AIには、書いたものを自分で動かして確かめることも禁じた。

15個すべてが、作る前に決めておいた確かめる点を満たした。

難しさは「神経衰弱」から「3Dの箱庭」「1時間遊べるRPG」まで5段階に上げた。どこかで壊れ始める想定で、打ち切りの条件まで決めていた。しかし今回の15個の中に、その境目はなかった。

何を確かめたかったのか

「AIに頼めばゲームもアプリも作れる」という話は、ネット上にいくらでもある。ただ、紹介されているのは数個の作例がほとんどで、難しさを変えながら同じ条件で数えた記録は、探した範囲では見つからなかった。

そこで、条件をそろえて数えることにした。問いは一つ。

一言の依頼だけで、AIはどの難しさまで作れるのか。

作ったのはClaude Code。触って判定したのは人(このサイトの運営者)だ。

条件

  • 依頼は1回だけ。作り直し、追加の依頼、人やAIによる手直しはしない
  • 依頼文は全部同じ型で、題材の部分だけを差し替える
  • 1個ごとに新しい会話で作らせ、前の題材の内容を引き継がせない
  • AIは、書いたコードを実行もテストもせず、そのまま保存する
  • 成果物はHTMLファイル1つ。外部の素材、通信、ブラウザの保存機能は使わない
  • 題材ごとに「確かめる点」を3つ、作る前に決めておく。出来を見てから基準を動かさない

判定は3段階にした。確かめる点が3つとも満たされれば「使える」。開いて動くがどれかが欠けていれば「動くが使えない」。開けない、始められない、すぐ壊れるなら「動かない」。面白さや難易度の調整は、判定に入れていない。

難しさは5段階に分け、各段階3個ずつ、計15個を選んだ。段階1は、ネット上で「AIで作れた」とよく紹介されている定番。そこから、ルールが多いもの、技術的に難しいもの、対戦相手や規模が必要なもの、無茶だと思うものへ上げていった。

結果

確認した範囲で使えた15 / 15

15個とも開けて、最初の画面がエラーなく表示された。「動かない」「動くが使えない」と判定されたものは一つもなかった。

#題材作る前に決めた確かめる点制作時間判定
段階1 / 定番(基準)
01落ち物パズルブロックの移動と回転 / 1列そろうと消える / ゲームオーバーとやり直し約4分使える
02神経衰弱2枚めくれる / そろう・戻るの判定 / 全部そろうと終わる約2分使える
03誕生日カード作成ページ名前とメッセージが反映される / デザインを変えられる / 完成したカードを見られる約5分使える
段階2 / ルールが多い
042人で対戦できる将棋駒が正しく動く / 持ち駒を打てる・成れる / 反則の手が指せない約4分使える
05数式が使える表計算数字と文字を入力できる / =A1+B1 が計算される / 元のセルを変えると結果も変わる約13分使える
06毎回ダンジョンが変わるローグライク始めるたびにマップが変わる / 戦闘とアイテム / 次の階へ進める・倒れると終わる約9分使える
段階3 / 技術的に難しい
07一人称視点の3D迷路立体的に見える / 歩けて壁をすり抜けない / ゴールで終わる約5分使える
08ピンボール重力とはね返り / 左右のフリッパー / 得点とボールの消費約6分使える
09音が鳴る作曲ツールマス目に音を置ける / 置いた通りに鳴る / テンポを変えられる約6分使える
段階4 / 相手や規模が要る
10コンピューターと対戦できる将棋コンピューターが反則でない手を指す / 詰みで勝敗がつくまで1局指せる / 明らかな只取りを見逃さない約6分使える
11街づくりシミュレーション道や建物を置ける / 時間が進み人口やお金が変わる / 置き方で結果が変わる約11分使える
12レイヤーが使えるお絵かきソフトペンで描けて色と太さを変えられる / レイヤーの追加・表示切替・並べ替え / 元に戻す約8分使える
段階5 / 無茶
13パソコンのデスクトップ画面風の環境ウィンドウを開く・動かす・閉じる / 中身の違うアプリが3つ以上使える / 複数のウィンドウを切り替えられる約10分使える
143Dでブロックを置いて壊せる箱庭立体の世界を歩き回れる / ブロックを置ける / ブロックを壊せる約8分使える
15町・ダンジョン・ボスがある1時間RPG町で会話や買い物 / ダンジョン探索と戦闘 / ボスを倒して終わりまで行ける約35分使える

制作時間は、依頼してからファイルが保存されるまでの時間。最短は神経衰弱の約2分、最長はRPGの約35分で、ほかの13個は約4分から13分に収まった。

段階1の3個を開いた直後の画面。左から落ち物パズル、神経衰弱、誕生日カード作成ページ。公開していない題材の画面は載せていない
段階1 / 定番(基準)落ち物パズル、神経衰弱、誕生日カード作成ページ。開いた直後の画面を、手を加えずに並べたもの。公開していない題材は、画面も載せていない。
段階2の3個を開いた直後の画面。左から2人で対戦できる将棋、数式が使える表計算、毎回ダンジョンが変わるローグライク
段階2 / ルールが多い2人で対戦できる将棋、数式が使える表計算、毎回ダンジョンが変わるローグライク。開いた直後の画面を、手を加えずに並べたもの。
段階3の3個を開いた直後の画面。左から一人称視点の3D迷路、ピンボール、音が鳴る作曲ツール
段階3 / 技術的に難しい一人称視点の3D迷路、ピンボール、音が鳴る作曲ツール。開いた直後の画面を、手を加えずに並べたもの。
段階4の3個を開いた直後の画面。左からコンピューターと対戦できる将棋、街づくりシミュレーション、レイヤーが使えるお絵かきソフト
段階4 / 相手や規模が要るコンピューターと対戦できる将棋、街づくりシミュレーション、レイヤーが使えるお絵かきソフト。開いた直後の画面を、手を加えずに並べたもの。
段階5の3個を開いた直後の画面。左からパソコンのデスクトップ画面風の環境、3Dでブロックを置いて壊せる箱庭、町・ダンジョン・ボスがある1時間RPG。公開していない題材の画面は載せていない
段階5 / 無茶パソコンのデスクトップ画面風の環境、3Dでブロックを置いて壊せる箱庭、町・ダンジョン・ボスがある1時間RPG。開いた直後の画面を、手を加えずに並べたもの。公開していない題材は、画面も載せていない。

実際に触る

作った25個(本番15個、予行10個)のうち、20個をこのサイトの中で開けるようにした。AIが書いた中身には手を入れていない。加えたのは、外部と通信できないようにするための設定を先頭に入れたことと、改行コードをそろえたことだけだ。

どれも外部と通信できない枠の中で動き、入力した内容や描いた絵がどこかへ送られることはない。パソコンで使う前提のものが多く、クイズの答えなど中身の正確さは確認していない。

残りの5個(落ち物パズル2個、3Dの箱庭、1時間RPG、RPG風バトル)は公開していない。見た目や仕組み、用語が、すでにある有名な作品に近いと判断したためだ。一言で頼むと、AIがよく知られた作品に寄せたものを返してくることがある。これも今回分かったことの一つだった。

どこまで確かめたか

「使える」は、決めておいた3つの点を人が実際に触って確かめた、という意味だ。最後までやらないと分からない点については、次のとおり確認している。

  • 2人対戦の将棋:二歩などの反則を実際に試し、指せないことを確認した
  • コンピューター対戦の将棋:詰みで勝敗がつくまで1局指した
  • ローグライク:次の階へ進むところと、倒れて終わるところの両方を見た
  • RPG:町、ダンジョン、戦闘を確認し、ボスを倒してエンディングまで進めた

一方で、確かめていないことも多い。長く使い続けたときに壊れないか。将棋の細かいルール(千日手や打ち歩詰めなど)が正しいか。ゲームとして難易度が適切か。表計算に入っているという約100種類の関数が全部正しいか。これらは今回の判定の外にある。

予行の10個

本番の前日に、定番の題材だけで10個の予行をした。落ち物パズル、もぐらたたき、神経衰弱、シューティング、RPG風バトル、クイズ、塗り絵、週間タスク管理、誕生日カード、商品紹介ページ。

10個とも開いて動いた。触ったあとの感想はこうだった。

どれもよくできている。ゲームとして公開するなら、テストプレイを重ねて難易度を調整する必要はある。それでも、一度の依頼で作ったとは思えない出来だった。

この予行は、上の15個には数えていない。条件が違うからだ。予行ではAIが保存前に自分で確かめることを止めておらず、書いただけのものから、自動で動かしてテストし、難しさを調整したものまで、題材によってばらつきがあった。確かめる点も先に決めていなかった。

定番では差が出ないと分かったので、本番では「テストなし」を依頼文に入れて条件をそろえ、難しさを段階的に上げることにした。

頼んでいないものが付いてくる

依頼は「落ち物パズルゲームを作ってください」のような一言だった。返ってきたものには、頼んでいない機能が多く入っていた。

落ち物パズルには、次のブロックの表示、ホールド、効果音、タッチ操作。将棋には、待った、棋譜、千日手の判定。表計算には、書式設定、行と列の挿入、CSVの読み書き。デスクトップ風の環境には、メモ帳、電卓、ペイント、マインスイーパーなど8つのアプリ。

これらはAI自身の報告と、開いた画面で見えた範囲の話で、一つひとつが正しく動くかは確かめていない。確かめたのは、先に決めた3つの点だけだ。

境目は見つからなかった

15個が全部通ったあと、さらに難しい題材を6個考えた。4人打ち麻雀の点数計算、積み木の物理、50ステージすべてが解けるパズルなどだ。

ただ、この案は採用しなかった。並べてみると、本当に難しくなったのかが分かりにくい。それに、確かめる側の手間が大きすぎる。50ステージが全部解けるかを人が確かめるのは現実的ではない。

題材を一つに固定して、頼む数だけを増やしていく案も出た。こちらは、最初の問いからずれ始めていた。

そこで、ここで区切った。「どこから作れなくなるか」には答えられていない。分かったのは、今回試した範囲では壊れなかった、ということまでだ。

WHAT REMAINED

確かめる側が先に限界になった

Claude Code(Claude Opus 5.5)に一言ずつ頼んで、テストなしで15個を作らせた。神経衰弱から、反則を防ぐ将棋、数式が計算される表計算、3Dの箱庭、1時間のRPGまで、15個すべてが先に決めた3つの点を満たした。

想定と違ったのは、難しさを上げていく途中で先に限界が来たのが、作る側ではなく確かめる側だったことだ。作るのは数分から数十分。それが正しいかを人が確かめるには、将棋を詰みまで指し、RPGを最後まで遊ぶ時間が要る。

使ったモデルは一つで、題材ごとに作ったのは1回だけ。判定したのは一人で、確かめたのは3つの点だけだ。同じ依頼をもう一度出せば、違うものが返ってくるはずだ。

一言の依頼が壊れるところは、今回の15個では見つからなかった。先に音を上げたのは、確かめる側だった。

EXPERIMENT DATA

実験データ

実験日
予行 2026年10月8日 / 本番 2026年10月9日
実行環境
Claude Code(デスクトップアプリ)
モデル
Claude Opus 5.5 claude-opus-5-5
作らせ方
題材ごとに新しい会話(サブエージェント)を1つ立て、依頼文を1回だけ渡した
本番の個数
5段階 × 3個 = 15個
判定
使える 15 / 動くが使えない 0 / 動かない 0
制作時間
最短 約2分 / 最長 約35分
ファイルの大きさ
1個あたり 約20KB〜91KB(HTMLファイル1つ)
AIによるテスト
なし(依頼文で禁止。15個ともAIが「実行していない」と報告)
機械的な確認
Claude Codeが実施。ファイルが1つであること、外部の素材・通信・保存機能の記述がないこと、ブラウザで開いてエラーが出ないことを15個すべてで確認
人の判定
運営者1人が実際に触って、確かめる点に○×を付けた
予行
定番10個。条件が異なるため、上の数には含めない
役割
企画案・条件の下書き・制作・機械的な確認・この記事の下書きはClaude Code。企画の選択、条件の承認、判定、公開の承認は人
成果物の公開
25個のうち20個を公開。既存の作品に近いと判断した5個は非公開。公開分は、通信を禁じる設定の追加と改行コードの統一以外、作られたままの内容
追加費用
0円 / 今回のための新規契約・購入なし
実際に渡した依頼文の型
{題材}を作ってください。HTMLファイル1つで完結させ、外部の素材・ライブラリ・通信・ブラウザの保存機能(localStorage、Cookieなど)は使わないでください。書いたコードを実行したりテストしたりせず、書き上げたものをそのまま {保存先} に保存してください。質問はせず、この1回の依頼で完成させてください。